マンチェスター･ユナイテッド 1-0 リバプール

うーん、勝てなかったか。ケニー･レッズの船出は、進水したとたんにいきなり横から大波を食らった感じでした。開始数十秒でベルバトフとアッガーの接触でPKを取られて1点リードされ、さらにキャプテンが前半のうちに一発レッドで退場に。PKの判定はハーフタイムにゲスト出演していたアラダイスさえ厳しいと述べざるを得ないほどの判定で、25ヤードも離れた位置からウェブは何が見えたんだと不思議になりました。あんな軽い接触でもんどりうって倒れるベルバトフはいたいけな少女か。
キャプテンの退場は、フィフティのボールに飛び込んで行って相手選手と接触したものです。ボールに行っていたのでイエローが妥当と思うんですが、滑り込んだのが両足だったし場所がオールド･トラフォードですから、やや軽率だったと言えるかも。これで彼はマージーサイドダービーにも出られません。横波きつすぎ。

しかし試合内容は非常に良かったです。ユナイテッドに敗戦して、こんなさっぱりした気持ちになれたのは初めてです。今日のアウェイサポーターたちは、ウェブてめえと思いながら（試合後にバベルは、「で、彼が最高の審判の一人なんだってさ。冗談だろ、やれやれ」とつぶやいてます）、しかしチームを誇りに感じて家路につくことができたと思います。二つの議論の対象になるような判定が試合を決めてしまいましたが、試合の3分の2を1人少ない状態で戦いながら、相手に2点目を許さず、なおかつ何度かチャンスも作っていたのは評価に値すると思います。アウレリオのFKは本当に惜しかった！選手たちは本当に良くバトルしていました。

立ち上がりから、これまでのチームとの違いがはっきりと見えました。高いライン、相手への果敢なハイプレス、放り込みはほとんどなく、攻めあぐねてのバックパスもなし。フォーメーションは4-4-1-1というより4-5-1で、基本キャプテンがトップ下ですが、メイレレスもかなり高い位置取りをし、中盤は逆三角形のような感じでした。そして両サイドハーフも高め。かなり攻撃的な感じで、11人の時には相手に試合の主導権を取らせず、むしろ中盤はこちらの方が優勢でした。メイレレスが1週間あいたにも関わらず、ちょっと本調子ではなかったですね。まだ足首が万全ではなかったのかもしれません。

開始早々に得点はされましたが、それでも取り返せる気配は十分にありました。それだけに、良いパスを前線に出していたキャプテンの退場が非常に痛かったです。しかしそれでずるずる下がることなく、あくまで高いラインをキープして、数的に足りないところはアッガーやシュクルテルが果敢に上がって攻めようとしていたのは、賞賛に値すると思います。結局前半でユナイテッドにゴールを脅かされたのは、CKからのエバンスのヘッドがポストを叩いた場面くらいでした。

後半は立ち上がりからユナイテッドが試合を決めに、攻勢を強めて来ました。危ない場面が何度かありましたが、選手たちは集中してとても良い守りを見せてくれました。70分ごろにはユナイテッドの分厚い波状攻撃があったんですが、レイナが鬼神のような4連続セーブ！それから右SBに入ったケリーが、ギグスを対面にしながら凄まじく良かったです。守備は万全、攻撃でも前半にボックス内に進入した彼にキャプテンがぴたっと合わせたスルーパスを送ったのにはしびれたし、後半一人足りない状況でも良い上がりを何度も見せていました。この位置のポジション争いは、チーム内で一番ハイレベルなのでは。

交代で入ったバベルとシェルベイも良かったです。バベルは入っていきなり惜しいシュートを放っていたし、すごく良く動いてチャンスを狙っていました。シェルベイも何度か高いいいところで上手くボールを奪い、チャンスに結び付けていました。相手のレベルや状況を考えると、彼のこれまでで最高の試合だったと思います。

今日は10人になっても全員が気持ちの入ったプレーをして、チームが一体となった守備が見られました。敗戦ですから満足とは決して言いませんが、今後に向けて大いに期待が持てるパフォーマンスです。最後まで見ていてワクワクできる、そういう試合でした。最後にピッチに立っていた選手たちの平均年齢は、今までに比べるとすごく若かったんじゃないでしょうか。そういう彼らが頑張ってくれたのがすごく嬉しいです。

それから今日もアウェイサポーターはすばらしかったです。キャプテンの退場直後の彼へのチャント、何度も起こるFOARやダルグリッシュチャント、そして終了間際の、ユナイテッドファンの妨害にもかき消されず響くYNWA。良い試合でした。

試合後のケニーのコメントです。だめだ、こう書くだけでニヤニヤしてしまう。

●ケニー（公式HP）
「ファンの歓迎はすばらしかった。モウリーニョかギャリー･ネビルのふりをして彼らのコーナー沿いを走って行こうかという考えが頭をよぎったんだか、そんなことはしないで済んだよ！
しかしファンはずっと私と私の家族のために特別な場所を維持してくれていたし、そういう幸せな時の長い思い出を作ってくれたことに感謝している。私は彼らにそのお返しができることを願っている。私に対する彼らの今日のサポートはすばらしかった。
私は未来を予見することはできない。私ができるのは、1977年に私がサインした時と同じことを約束するだけだ･･･それは、ケニー･ダルグリッシュの100%の献身だ。

これからの6ヶ月間は、私にとってすばらしい旅になるだろう。もし我々が今日やったような努力と献身を続ければ、私たちは大丈夫だ。選手たちを励まし改善するのは、私の責任だ。そして上手く行けば、私たちはもっと良くなるだろう。

（ファーガソンとのキックオフ前の会話について聞かれて）彼は『ようこそお帰り』と言ってくれたよ。正直言って、彼は私が来る前からここで先にウォームアップをしていたんだろうと思ったよ！

もちろん、私は敗戦して喜ぶつもりはない。しかし我々にとって最も重要なのは、私たちが何をしたかだ･･･私たちは、選手たちから非常に大きな努力と献身をもらった。彼らの努力と熱意、そして献身がサポーターたちと一つになっていた。我々全員が同じ一つの方向にまとまれば、事態を改善して前に進む良いチャンスを得られるだろう。
努力と献身に関しては、我々の選手を誰一人として非難できないと思う。そう、我々はもっと良いパスをしてもっと良いフィニッシュができたかもしれないが、ここはアウェイで戦うのが困難な場所だ。開始1分でペナルティで失点し、選手を一人退場で失えば、私たちにとって難しい状況になるのは当然だが、選手たちはしっかりと仕事をしてくれた。後半の遅い時間帯にポストを叩くまで、相手にはペナルティ以外にほとんど得点チャンスはなかった。私たちがトップチームを抑えることができるならば、それは吉兆だよ。

（トーレスの調子について聞かれて）努力と献身に関しては、フェルナンドからこれ以上ないほどのものが得られた。彼は消耗しきるまで頑張っていた。これは彼が自分を復活させ、批判を黙らせようと決意していることのすばらしい表れだ。彼はこの日に自分に期待された全てをやってくれた。
選手たちを見る場合に、その選手がどれだけ良いかが問題ではないんだよ･･･我々はまだ少し自信を取り戻さなければならない。そして彼にそういう自信を取り戻させなければならないんだ。選手たちに自信を取り戻させ、自分自身を信じさせなければならない。それができれば、その時には我々は前進するだろう。

グレン･ジョンソンの奥さんが出産を迎えたので、昨日は少しばかり選手たちが混乱することになった。彼が妻のそばにいたいと願ったのは、100%正しいことだ。
若いマーティン･ケリーが代わりに入って、彼はピッチの上の誰とも同じ位優れた選手だ。マーティンにとって、そして今日出場した全ての若手にとって、すばらしい大きな励みになったよ。ジョンジョ・シェルベイが交代で入り、フリーキックにちょっと野心を持っていたんだが、少なくとも彼は見上げて何かに気づいたようだったね。

（新しいコーチ陣を任命するのかと問われて）わからないね･･･まだ私は来たばかりだ。今のポジションを去るスタッフがいるのなら、もちろんそこは補充しなければならない。

（新しい選手の獲得の可能性について）もし誰かが私に、『これがあなたの選手たちのスカッドです、仕事を引き受けますか？』と聞いたとしたら、私はこの選手のスカッドでやると答えたよ。誰かを獲得しようという考えを、私は事前に何も想定してはいなかった。私が就任する前にクラブが誰かをターゲットにしていたのかどうか、それは私にはわからない。そして私はそれを知る特権のあるポジションにはいなかったのだから、知っているはずがないよ。

（ケニー復帰の経緯についてもっと知りたがるレポーターたちに）私はボートに乗っていて、そして幸せだったよ！その時にジョン･ヘンリーからの電話が鳴って、彼は『来てシーズン終了までチームの面倒を見たいかい？』と言ったんだ。プロのアスリートとして、私は法廷に立たされていたんだよ！
すばらしいことだ。記憶がよみがえるその早さは驚きだね。私がドレッシングルームにいたのが、遠い昔とは思えないよ。私と私の家族にとって非常に大きな意味を持つ、そういうクラブなんだ。

（SKY SPORTSより）あのPKは、ペナルティではなかったと思う。あの退場は･･･今はどういう人間が退場になるんだろうか？事実としては、ハワード･ウェブはあの出来事から一歩はなれたところにおり、我々の選手がボールを蹴った後に彼は笛を吹いた。」