先月ご紹介した
イスラエルのTVのベナユン特集を、現地ファンが英語に訳してくれました。それをさらに日本語訳してみました。
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代表チームについてナレーション:テルアビブのテレビカメラで、我々は周りに配慮した、しかし非常に動転したベナユンを見た。イングランドのプレスは、彼とリバプールの監督ラファエル・ベニテスとの対立を報道していた。それは、イスラエル代表でプレーする前にヨッシが何試合かを欠場していたためだった。
ベナユン:ラファが僕のところに来てこう言ったんだ。リバプールで100%フィットしていなければ、僕はイスラエル代表ではプレーできないってね。リバプールはイスラエルサッカー協会に、この選手は負傷しているというファックスを送った。しかしそれから僕とラファは話し合いを始めたんだ。僕はこう言ったよ、「代表チームの試合に行くまでにはまだ1週間あるから、僕のコンディションが良くなってプレー可能になるかどうかを見る、少なくともそのチャンスを下さい。」ってね。それから1回か2回話し合って、代表戦に行く許可をもらったんだよ。
リポーター:イスラエルのプレスの中にも、あなたに対する批判がたくさんありました。彼らは、あなたが国際戦の前に怪我をするのは理由があるんだと言っています。(ギリシャ戦の前に、スポーツ紙は1998年から遡ってのベナユンの負傷リストを掲載した。)
ベナユン:うん、まるで僕が計画的にそうしているみたいにね。彼らは、僕が自分に注目を集めるためにこうしているんだと言っている。イスラエルで注目を浴びることが嬉しいからってね。ばかげたことだよ。僕は人が何を言うかは気にしない。自分のキャリアにとって正しいと思うことをやり、夢を実現したい。もしもリスクを犯す必要があるなら、僕はそうする。
リポーター:およそ5万人の観衆がラマトガンのスタジアムを訪れ、その大多数があなたを見にやって来ます。あなたがプレーするかしないかで、彼らを落胆させることへの恐れが頭をよぎったりはしませんか?
ベナユン:それをまず第一に思うよ。ファンはみんな僕にプレーして欲しいと思っていると信じているし、彼らは僕がチームに貢献できることを知っている。
もうすぐ僕は29歳になり、国際大会でプレーするチャンスはもうそれほどたくさんはないだろう。今回のようなワールドカップに出場するチャンスは、いつあるだろう?間違いなく今回が僕にとっての最大のチャンスだと思う。
リポーター:国歌を聴くときの気持ちは・・・
ベナユン:国歌が流れている最中は、僕は目を開けていることができないんだ。誇りに涙が出るんだよ。選手全員と共にラマトガンに立ち、一列に並んで観衆と共に国歌を聴くのは、最も喜びに満ちた瞬間なんだ。
成功への道のりについてベナユン:僕たちは苦労したよ。家には金も何もなかった。バスの切符を買う金すらなかったよ。僕と僕の父は、何年間も練習に行くのにヒッチハイクをしていたんだ。誰も止まってくれなくて、ユースの試合のキックオフ3分前に着いたこともあったよ。僕はスターティングメンバーの中に入っていて、僕たちは1-3で勝って僕はその3点を全部決めたんだ。
ナレーション:ヨッシ、ディモナのコンクリートのピッチから来たフットボールの王子は、代表ユースチームからヨーロピアン・チャンピオンシップの決勝までの道のりをたどった。オランダのビッグクラブであるアヤックスのオファーは断れないものだった。16歳で交わしたプロ契約は家族全員を含むもので、大金と確実な将来を意味した。
ベナユン:僕はガールフレンドのMirit(現在の妻)と別れて移籍することが出来なかった。まだ知り合って10ヶ月しか経っていなかったから、彼女がオランダで僕と一緒に暮らすことについて彼女の両親を説得するのは楽じゃなかったよ。僕はアヤックスに、彼女が僕と一緒に行かないなら、僕も行かないと言ったんだ。
ナレーション:オランダで彼は14番のシャツを受け取った。アヤックスでは、それはクライフが着けていた番号だった・・・これまでで最も偉大なフットボーラーの一人である選手。
ベナユン:2、3ヶ月が経った頃には、僕は家族がばらばらになっていると感じていた。オランダでの暮らしは、僕の母と兄弟にとってとても難しいものだったんだ。二人はイスラエルに帰り、僕は父とガールフレンドと共に残ることを僕たちは決めた。それは簡単なことじゃなかった。僕はそれほど成功しなくても、幸せである方がいい。幸せであるのが一番大事なことだからね。自分の心に従って、一日後には僕はアヤックスを去って家に帰ることを決めたよ。その時の僕は世界で一番幸せな人間だった。人はいつも僕がそのことを後悔しているだろうと言う。もしも僕が留まっていたら、さらに成功していただろうとね。でも僕は今ここにいる。僕は望み得る最高の場所に到達した。いろんなことを経て、僕はリバプールにいる。僕が達する運命にあった場所に到達したんだ。
リバプールまでの道のり ナレーション:リバプールに加わるために、彼は単純ではないことをやらなくてはならなかった。ウェストハムは彼の所有権を持っており、彼にここに留まることを要求した。しかし彼らは破ることのできない頑固さと決意に直面した。
ベナユン:僕は2週間毎日彼らと話し合い、彼らを説得しようとしたよ。ウェストハムが提示したサラリーの50%を僕はあきらめた。僕にとっては金は興味がなかった。彼らにこう言ったよ。「金を渡すから、どうか行かせてくれ。これは僕の夢で、それをかなえさせてくれ。」ってね。最終的には説得できたよ。
彼の最高のゴールベナユン:アンフィールドでのマンチェスター・シティ戦で、僕は試合に勝てるチャンスを外してしまった。家に帰って、僕は妻に自分が外したことがどれほど信じられないかを話したんだ。彼女は僕にこう言ったよ。僕が外したことは良い兆候だ、なぜなら神は僕にベルナベウでの決勝点を取っておいてくれているんだから、ってね。(笑いながら)僕がベルナベウで決勝ゴールを決めるだって!?
ほとんどのフリーキックでは、僕はペナルティボックスの外でリバウンドを狙っている。でもあの時は中に入って行こうと決めたんだ。アウレリオのクロスの前にリエラが僕のところに来て、「一緒にニアポストに走りこもうぜ」と言ったんだ。僕は「よし」と答えた。あれこそ神の介在じゃないかな?
僕は嬉しさのあまり狂ったように叫んだよ。次の日の報道で自分の写真を見たときは恥ずかしくなった。ゴールを決めてまず真っ先に心に浮かんだのは、妻と子供のことだった。この瞬間に、彼らとディモナの両親や家族、友人がどんな風に感じているかを思い浮かべたんだ。
リポーター:どのようにして、あなたは自分を地に足を着けさせているんですか?
ベナユン:地に足を着けておかないわけにはいかないよ。次の試合ではまた自分の力を証明しなくてはならないんだから、次の試合に集中しなくてはならない。僕は重要なゴールを決めたけど、それがどうしたって?それが次の試合での出場を保証したり、突然僕がビッグスターになったりするかって?そんな風には行かないよ。
リポーター:あなたはビッグスターじゃないんですか?
ベナユン:うん。僕は選手をスターだとか言うのは嫌いなんだ。
アンフィールドについてリポーター:私たちがリバプールをTVで見ていると、選手たちがトンネルを歩いて出てくる時に観衆がYNWAを歌うのを聴きますね。夢の中にいるような気分になりますか?
ベナユン:うん。疑問の余地なく、僕がリバプールに来てからの経験の中で、一番特別なものだよ。アンフィールドのピッチに足を踏み入れただけで震えが来て、自分がここにいることを毎日神に感謝している。
アドレナリンが体を駆け巡ってそれが興奮をもたらし、1分たりとも走らないではいられなくなるんだ。スライディングタックルもできるし、観衆はまるで得点を決めたかのように沸き立つんだよ。
金銭についてリポーター:スパルタク・モスクワは$100m近いオファーを出して来ましたね。どうやってNOと言ったんですか?
(※注 $100mは英訳のままで、ヘブライ語でもそう言っているそうです。米ドルではないんじゃないか?という話です。イスラエル通貨なら23億円ぐらい)
ベナユン:誰でもメリットとデメリットをはかりにかけるよ。金銭的にはそれは間違いなく桁外れのオファーだけど、キャリア的には後退になるだろう。そのまま姿を消してしまうこともあり得る。
リポーター:フットボールをプレーする一人の人間として、一週間に5万5千ポンドの金額を受け取るのは妥当だと思いますか?(※このレポーターは、ベナユンに彼がいくら稼いでいるかを言わせようとしているらしい)
ベナユン:推測は誰でもできるよ。毎日違う数字が記事になっている。それは重要なことじゃないし、意味がないよ。どうでもいいことだろう?街の子供が、僕がいくら稼いでいるかに興味を持つと思うかい?その子は僕がピッチの上で何をするか、ゴールを決めるか試合に勝つかを気にするよ。彼が興味を抱くのはそういうことなんだ。
選手たち、ベナユンについて語るアルベロア:僕は彼にこう言うんだよ。「もっと自己中になれよ。お前はこのチームの中で違いを作れる選手なんだから。」ってね。僕はいつも彼に、もっと自分を信じる必要があると言っているんだ。このチームの中にヨッシのような選手は他にいないし、世界の中でもヨッシのような選手は大勢はいない。
レイナ:僕は10年間フットボールをやってきたけど、今までドレッシングルームを共に過ごした中で彼は最高のチームメートの一人だね。
トーレス:うん、僕に言わせれば、彼はいつもプレーしているべきだよ。彼のような、常に前を見てストライカーを探し、パスを出す能力のある選手が僕には必要なんだ。僕はいつも彼に言っているんだけど、もしも僕が監督だったら、彼をいつでも僕と一緒に起用するだろう。
チームメートは全員、彼については良いことしか言わない。それは今時のフットボールではすごく稀なことだ。
ユーモアのある一面リポーター:私たち(番組クルー)はあなたの試合に行きましたが、ワールドカップ予選のギリシャ戦のイスラエルでの第一戦は残念ながら引き分けに終わり、第二戦は悔しい敗戦に終わりました。今度は私たちはリバプールに来たわけですが・・・これはどういうことでしょう?
ベナユン:それは君たちは来るべきじゃなかったってことだね。君たち皆は悪運を持って来てるよ!これは僕じゃなく、君たちの試練だよ。もしも神が今度の土曜にリバプールが勝つことを許さなかったら、君たちはもう二度と僕の近くには寄らないでくれよ!
リポーター:遠征でのあなたのルームメートは誰ですか?
ベナユン:フェルナンド・トーレス。
リポーター:一緒に何をするんですか?
ベナユン:話をしたり、TVを見たり。彼はプレイステーションが大好きなんだ。僕はあんまり好きじゃない。他の選手が来てプレーしてるよ。マスチェラーノとか・・・
マスチェラーノ:そうそうそう、僕たちはフェルナンド・トーレスと一緒にやってるよ。
トーレス:僕はだいたいマスチェラーノに勝つね。彼は本当にプレイステーションが下手くそなんだ。
ベナユン:僕は後ろからの引き立て役だよ。誰が負けてもからかってるよ。
マスチェラーノ:僕はプレイステーションだろうと何だろうと、負けるのが嫌いなんだ。
番組のエンディングでリポーター:この映像を何と名づけましょうか?
ベナユン:そうだね、"You'll never walk alone"は?
リポーター:"ディモナ生まれのダイヤモンド"はどうでしょう?
ベナユン:ダイヤモンドだって?かろうじて大理石ってとこだよ。
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さすが
ジェイミー・キャラガー賞で一番のナイスガイに選ばれた男、その人柄がにじみ出ているインタビューだと思います。彼は母国では国民的ヒーローですね。彼の出身地のディモナは核施設がある街で、核兵器工場であるといううわさもあり、昨年はちょうど彼が代表戦もあって帰省しているときに自爆テロが起きました。そこで彼は練習のバス代もままならない暮らしからここまで来たんですね。イスラエルはWC予選では10戦中6戦を終えて4位ですが、トップとの差は4ポイントでまだまだ可能性はあります。何とか夢を実現させて欲しいです。
マドリー戦のあの劇的なゴールの裏には彼の奥さんの力があったんですね、良くやってくれました!番組には16歳の時のベナユンと彼の奥さんの映像が出てきますが、確かにアヤックス行きを蹴っても一緒にいたいというのがわかる、とてもきれいな方で2人はいい感じです。
TVの番組の動画は↓で見られます。
オープニング Part1 Part2 Part3 Part4 Part5PR
無題
ベナユンのインタビュー、聞いてみたかったので訳して下さってとても嬉しいです。
本当に性格がいいんでしょうね。誰とでも仲良くできて何にも属さない・そういうところが素敵だと思います。
ベナユンのような選手が大事にされるクラブであってほしいなと思います。
トーレスの、チームメイト全員が良い事しか言わないのは今時稀なこと・というのは、たいていは誰かと対立してるっていう風に聞こえて、やっぱりね・と思う反面リバプールはそうであってほしくないな・と思いました。
きっとそういうところでも、ベナユンのような人がつなぎ役になってくれるんだと思います。
来シーズンはさらにパワーアップして頑張ってほしいです。
Re:無題
toshiさんのおっしゃるように、ベナユンのような選手が大切にされるチームであって欲しいですね。冬には彼の口から移籍を望む言葉も出ていましたが、それからの活躍はすばらしい!気持ちの強い選手ですね。そしてフットボールに向かう姿勢がとても真摯であることも、このインタビューでよくわかりました。
トーレスとルームメートというのはちょっと意外でした。2人のいいコンビネーションを来季にはもっとたくさん見たいですね~。