2月19日、インテル戦前に
タイムズ紙に掲載された、Guillem Balagueによるトーレスのインタビュー記事です。
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インタビュールームに行く途中、フェルナンド・トーレスはリバプールのスタッフの一人とおしゃべりを始めた。そのスタッフのアクセントは彼がマージーサイド出身であることを表しており、英語を学びはじめたばかりの生徒にとっては理解するのが難しいものだった。トーレスの答え方を見ていると、彼は言われていることを完全に理解している様子だった。彼はいいかげんなジョークに笑ってさえいた。
インタビューの前、私が彼に「Workと言ってみて」と言うと、彼は「Werk」と答えた。ディディエ・ドログバやティエリ・アンリはプレミアリーグとそれを取り巻く様々なことと折り合いをつけるのに1年間悪戦苦闘していたが、新たに獲得したスカウスアクセントでしゃべるトーレスには、わずかに数ヶ月が必要なだけだった。
「僕は最低限の努力しかしていないよ。」彼は言った。「クラブから来た人たちが、大きな努力を払ってくれている。彼らは僕を両手を広げて歓迎してくれて、何もかもがすごくやりやすくなるように助けてくれた。だから僕は、フットボールをすることだけを考えればいいんだよ。家や車、言葉の先生、そういう仔細ではあるけど重要なものを手に入れることについて、僕はそれほど煩わされなかった。僕のチームメートたち、前から知っていた人や新しい人達が、僕を生まれた時からここに住んでいたような気持ちにさせてくれた。僕はここに来てからとても楽しく過ごしているし、努力するようなことは何もなさそうだね。」
大会全てで29試合出場18ゴールという記録は、彼のためにクラブがアトレティコ・マドリーに支払った2650万ポンドに対して、すばらしい見返りである。中心メンバーであるスタッフを含めて誰も、このような即時のインパクトは予想していなかった。「それでも僕は、もしも彼がバルセロナやレアル・マドリーにいたとしたら、同じような数のゴールを決めていただろうと思う。」彼の親友の一人は、トーレスの最も印象的な試合がいつもバルセロナ戦だったことを思い出して、こう語る。「バルセロナのような楽しいフットボールをするチームは、大きなスペースがある。イングランドではほとんどどこもそういう風にプレーするからね。」
トーレスは、彼の成功にスティーブン・ジェラードが果たしている役割を高く評価している。「ストライカーっていうのは、僕たちのほとんどがやろうともしないようなパスを決める選手によって生きるんだ。」彼は語った。「ジェラードはそういう選手の一人だよ。彼はパスのラインと僕を同時に見られる目を持っている。そして、間違いなく、僕はここでのダイレクトフットボールから利益を得ているよ。スペインで見られるような多すぎるパス、過剰なまでのコントロールはここにはない。」
「ペナルティボックスに入りこむまで30回もタッチする必要はないんだ。ここでは、4回か5回で、クロスを入れるかシュートに持って行く。1対1、2対2のチャンスはもっと多いし、試合を決めるのがチームが払った多大な労力ではなく、選手たちの能力で決まることもよくあるね。トップチームを相手にする時は指示に従うし大きな努力が必要だけど、僕たちよりも順位が下のチームの時には、試合を決定付けるのは選手たちの能力だ。」
これは、ラ・リーガを後にし、以前のミスから学んでいる新しいフェルナンド・トーレスである。「ここでは、ボス(ラファエル・ベニテス)は僕にたった一つのことしか要求しない。僕がやらなくてはならないのはそれだけだ。」彼は語った。「アトレティコでは時に、僕はあまりにも多くのことをやりたがっていた。ここでは僕たちそれぞれがピッチの上で自分の役割を持ち、それ以上はない。僕はよく、ペナルティボックスからはるかに遠いところ、相手を脅かすことの出来ない場所でプレーしていたよ。」
トーレスのチームメートは彼を高く評価している。彼らは、この最も厳しいリーグでは誰もが成功できるわけではないことを理解しているからだ。「彼はフィジカルコンタクトを恐れないね。」彼のスペインの同胞であり、リバプールのミッドフィールダーであるシャビ・アロンソはこう語った。「ライバルのディフェンダーたちは、彼が自分たちを恐れていないことを知っているよ。」
ジェラードも同意見だ。「多くの試合で彼は痛めつけられているけど、それでもなお、プレーに戻り続けているよ。」彼は語った。スタッフの一人が口を挟む。「彼はおそらく、自分の前のスペースを使うことにかけては最高の選手だよ。」リバプールの監督であるベニテスは、彼に肯いて同意する。「彼は、ここで成功できるだけの強さと能力を持ち合わせています。」彼はそう語った。
トーレスは怪我で1ヵ月半離脱し、土曜のアンフィールドでのFAカップ5回戦、2-1で破れたバーンズリー戦を欠場した。しかし彼の貢献度は、ジェラード、ルーカス・レイバ、ホセ・マヌエル・レイナという、おそらく昨シーズンと同等かそれを上回る選手たちと同じくらい高く評価されるだろう。
しかし、リバプールがもう20年もリーグタイトルから遠ざかっている今、トーレスのゴールはその運命を覆すには十分なのだろうか?「本当のリバプールは、シーズン序盤に印象付けたその姿だ。」彼は語った。「僕たちはあのレベルを長い間キープしなくてはならない。それが出来るチームはリーグタイトルを争い、それが出来ないチームはタイトル争いから叩き出される。」
「僕たちは対戦するのにとても厄介な相手だ。しかし、あまりにも多くのポイントを落とし過ぎたよ。1月はリーグ戦で一勝も出来なかった。1000もの言い訳を見つけることはできるけど、それは安易な言い訳だ。選手たちはもっと出来たはずだ。」
「僕たちがポイントを取り落としたという印象を持った試合もあったし、逆に純粋な奇跡で恩恵を受けたと思えるような試合もあった。例えばダービー戦はラッキーだったけど、ウィガン戦は全くそうじゃなかった。全体的に、僕たちはトップ3はやっていないポイントの落とし方をしている。」
しかし、なぜポイントを取り落としたのか?心理的な行き詰まりなのか?選手たちの能力?ローテーション?「時々僕たちは、自分たちが優っていると感じながら試合を殺すことが出来なかった。」トーレスは語った。「でもスタッツを見れば、今シーズンは昨シーズンより良くなっているのがわかる。問題は、人々が今年僕たちにプレミアリーグタイトルを求めたことだ。進歩はしていて、僕は悪いシーズンだとは思っていない。僕たちは全てに優勝したいと思い始めていたけど、シーズンが進むに連れて、目標を変えなくてはならなくなるんだ。」
トーレスは、ローテーションがネガティブに考えられていることに驚きを感じている。「物事が望んでいるように行かない時は、人は非難の矛先を探すものだよ。」彼は語った。「僕たちは、監督が一つの哲学を持っているのを知っている。それは人々が彼が来る前から知っていたことで、彼はそれで成功を納めて来た。ローテーションを上手くいかない全てのせいにして非難するのは、すごく安易な決め付けだ。僕たちにとってそれは問題になってはいない。リバプールはローテーションを使って、チャンピオンズリーグやFAカップなどで優勝している。選手を休ませるのはごく当たり前のことだ。僕たち選手は決してそれを望まないけど、監督がそう言うなら、そうしなくてはならない。皆がそれを前進する道だと認めるなら、雰囲気が損なわれたりはしないよ。」
最近クラブを取り巻く焦りは、リーグタイトルに比べれば、チャンピオンズリーグやFAカップでさえその重要性が低いとみなされているからだ。トーレスはその感情を共有はしていない。チャンピオンズリーグではノックアウトラウンドの初戦でインテルと対戦し、ファーストレグは今夜アンフィールドで行われる。それは彼の欲求を強めている。
「トレーニング中でさえ、皆にまさしくスイッチが入ったように見えるよ。」彼は語った。「インテル戦はすごくきついけど、すごく見ごたえのある試合になるだろう。たくさんゴールが生まれるとは思わないし、セカンドレグで全てが決まるだろうね。鍵はどれだけストライカーが力を発揮できるかだ。彼らは、ズラタン・イブラヒモビッチがコンスタントに得点していないとよく言っていた。今シーズンは、彼はそういう批評家たちを黙らせている。彼はヨーロッパで最も波に乗っている選手の一人だよ。」
トーレスは会話を終え、その日の残りをいつもの日課へと戻って行った。ガールフレンドと犬と楽しく過ごし、おしゃべりをするか試合を見るためにレイナの家を訪れる。そしておそらくプレーステーションもやっただろう。
トーレスについて形容するのに、これよりも良い言葉はない。
「エル・ニーニョ現る。」
エル・ニーニョ・・・The Kid・・・とニックネームをつけられたこのフォワードは、1984年マドリードの郊外で誕生した。アトレティコのサポーターであり、19歳で彼はチームのキャプテンに任命された。
<アトレティコ・マドリーの戦績>
2部 (2000-02):40試合出場 7ゴール
ラ・リーガ (2002-07): 174試合出場 75ゴール
スペイン国王杯:24試合出場 7ゴール
ヨーロッパ戦(インタートトカップのみ):5試合出場 2ゴール
スペイン代表:46試合出場 15ゴール
<リバプールでの戦績>
プレミアリーグ:
ホーム:10試合(プラスサブ2)出場 10ゴール
アウェイ:9試合(プラスサブ1)出場 2ゴール
チャンピオンズリーグ(予選ラウンドを含む)
ホーム:2試合出場 2ゴール
アウェイ:2試合(プラスサブ1)出場 1ゴール
国内カップ
ホーム:1試合出場 0ゴール
アウェイ:1試合出場 3ゴール
前半ゴール 5 後半ゴール 13
ゴールなしの最長3試合
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