4月8日、デンマークの
Tipsbladetという雑誌に掲載されたアッガーのインタビューです。1月以上前のものですが、ファンが英語に翻訳してくれて、興味深い内容だったのでご紹介します。3月中旬に手術を受けた後のインタビューです。
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僕の右足ポーツマスでの骨折、そしてポルト戦での2度目で、ダニエル・アッガーのシーズンは破壊された。しかしこのフットボール選手は自分を哀れんではいない。彼はそのメンタルの強さを使って、前に進み、別の意味深いことに取り組み、彼の足を使わずに出来ることを強化している。もちろんそれはフラストレーションが溜まり、大声で叫びたくなる時もあるのだが。
カツン・・・カツン・・・カツン・・・。フットボールの、スパイクがタイルに当たるような音が聞こえる。しかしもちろんそうではない。その音はリバプールのトレーニンググラウンド、メルウッドのロビーから聞こえており、おそらくそこはスパイクは禁止されている場所だ。そして、その音はこのクラブのデンマーク人ディフェンダー、2週間スパイクを履いていないダニエル・アッガーから聞こえる。聞こえて来るのは、彼の右足の周りの二本のプラスチックの添え木の音で、カツカツというテンポは健康なフットボーラーからの音とは全く違っている。しかし、この23歳のデンマーク人は健康ではない。彼は腕に青い松葉杖を抱え、右足を膝まで白く固めてプレスルームに現れた。しかし悪いのは足の甲で、それは9月の半ば、ポルトでのどうということはないトレーニングセッションから続いている。
「いつの間にか、数ヶ月前から起きていた怪我だった。でも僕が最初に異変を感じたのは、プレミアリーグのポーツマス戦でだった。それでもプレーは出来たし、その後のトレーニングでも問題なかったから、次のチャンピオンズリーグのポルト戦のために僕は月曜にポルトに行ったんだ。そこで夕方にトレーニングして、その時に異常を感じて本当に痛かった。それは突然で、結局は少し時間を置いたらおさまったよ。でもそれからトレーニングが終わる2分前にまた異常を感じて、僕はもうやることはひとつしかないと思った。それで、コーチの所に行って何かおかしいと言ったんだ。」
ダニエル・アッガーは物静かな声で語る。それはじっと見つめる彼の目の表情、広い肩、Tシャツの袖から覗く色とりどりのタトゥーとは似つかわしくない。しかし彼は冷静だ。落ち着いて、彼のリバプールでのシーズンを破壊した足の骨折について、明確な気持ちを持っている。
辛い朝すばらしいシーズンになるはずだった。チャンピオンズリーグ決勝で昨シーズンを終え、アッガーはヨーロッパ最高レベルにおいて、恐ろしく強いディフェンダーであるという位置を確立した。突然足を骨折した時、彼は星をも打ち落とそうとしているかのように見えた。はじめ、ドクターは彼には手術は必要ないと考え、復帰がどんどん遅れてさえも、それほど深刻には受け止めなかった。しかし2月と3月のリザーブ戦の2試合の後で、それは疑いようもなかった。足はうまく動かず、アッガーは手術を受け、小さな骨片を除去した。それが回復を妨げていた物だった。
「僕は自分のこと、自分の体のことを良く知っている。僕はひどい意気地なしじゃない。僕は自分の持っているものでプレーし、ダメージを受けた時は、自分がプレーを続けられるかどうかわかる。今回は最初から良くなかったけど、手術しないで回復するチャンスを与えたんだ。おそらくちょっと長すぎたんだろうけど、今はそれは変えられない。トレーニングに復帰した時でさえ、僕は異常をずっと感じていた。何かの動きの拍子に痛みを感じて、まるで誰かが僕の足にナイフを突き立てているようだった。でも痛みは我慢できる。むしろ毎朝目が覚めてはがっかりしていたよ。良くなっているんじゃないかと期待してベッドを出て足を踏み出してみると、まだ悪い感じだし、足はこわばっていて、しっかり歩けるようになるまで何分かかかるんだ。」
「それで、僕は状態は良くないと思ったし、何試合かプレーしたあとでさえ全くひどいと感じたよ。たぶん60~70%のプレーしか出来なかったし、プレミアリーグのチームに復帰するには程遠い状態だった。でももう少し様子を見たんだ。それは僕が2006年の春、移籍した直後に足を怪我した時に学んだことだ。あの時は、僕はどんどん悪化していくだけの時に自分にもプレーを強いていたよ。いつもよりもさらに痛み止めを使ったりもした。でも今回は、時間がかかっても治るチャンスを与えたいと思ったんだ。冷静にならなくてはいけなかったしそうしたけど、最終的には僕たちに出来ることは何もなく、それで原因を見つけてそれを除去したんだよ。それについて僕に出来ることはあまりないんだ。ただそれと折り合って行くだけさ。僕は自分自身に、怪我のをするもこの競技の一部なんだ、腰を下ろして、それと付き合っていく方法を学べと言い聞かせたよ。それでも本当は、心の底ではほとんど『Fu**ing s**t!』と叫んで周りの物を全部壊したいような気分だったけどね。でもそんなことをしたって何もならないし。」ダニエル・アッガーはゆがんだ笑顔で語った。
この青年からは何の自己憐憫も感じない。彼のメンタルの強さは、このディフェンダーにこの厳しい時期を切り抜けさせている。ディディエ・ドログバがスタンフォードブリッジでの準決勝で彼をかわした時に、彼のメンタリティがそれを乗り越えさせたのと同じやり方だ。アッガーは再びゴールを決め返すだろう。そして彼が試合から遠ざかっているとしても、このディフェンダーは自分がクラブから取り残されているとは感じていない。
「いや、僕は毎日ここに来て皆と一緒にやっているから、とても近くにいると感じているよ。こういう状況を扱うには、それが全てだ。家に閉じこもって終始イライラしていたらきついだろうけど、外に出て、笑いながらこういう風に状況に対処していれば大丈夫だよ。」
「いろんなことを考えれば、僕は上々だよ。もちろん完全に楽しいってわけじゃないけど、やれる最善のことをしている。時間があるから、他のことに取り組んでいるよ。こういう状況の中からポジティブなものを見つけるとすればそれだね。何かで今までよりもレベルを上げることで、自分を元気づけるんだ。」
耳を傾けるディフェンダーしかし、それには何か他のことがなくてはならない。今は足を動かせず、ドクターはそれを望んでおり、リバプールにいての彼の一番の目標を実現させることはできなかった。その結果、このディフェンダーは二つのレストランの仕事に携わっている。ひとつはメキシカン、ひとつはイタリアンで、彼が足を骨折する少し前に買ったものだ。
「そんな感じだよ。本当にやりたいことが出来ないなら、何か他のことを見つけないとね。ぶらぶらして何もしないのは無駄だ。しっかり目を開いて、出来ることを探さなくてはならないんだよ。そして僕はレストランを見つけて、それをやっていくことですばらしい時間をすごしているんだ。やることは十分以上にある。僕は永遠の完全主義者なんだ。何かやるなら完璧じゃないと気が済まなくて、いつもそれを見守っているよ。自分のビジネスを管理できなければ、それはうまく動かない。」アッガーは彼のレストラン、彼の家に近いLark Laneにある店について語る。
リバプールでの暮らしは、そんな風にフットボールだけではないようだ。「生活基盤はしっかりしているよ。ピッチの上でうまくやりたいなら、ピッチの外でも良くやらないとね。僕たちにはすばらしい暮らしの場所があり、やることがあり、付き合う良い友人たちがいる。」彼はデンマーク人ガールフレンドとの生活について語る。ダニエルは新しい人々や物事に対してオープンであり、それはいつでも良いものだ。
「僕は自分のことをあれこれ話さない人間かもしれないけど、聞くのは好きだし、それで大勢の友人を得ているよ。もちろんフットボールをやっているといろんな人々と出会うけど、それは必ずしも悪いばかりじゃない。ほとんどの人は歓迎してくれるし親切で、悪い経験をしたのはほんの少しだ。でも僕は大勢の人を知っているけど、誰が自分の友人かも知っているよ。誰が信頼できて、誰が必要な時に僕のそばにいてくれるか知っている。僕は、この世界の大勢の人を信頼するというタイプの人間ではないんだ。それはできないんだよ。デンマークには僕の家族と、フットボールのことだけを考え始める前からの友人が二人いる。僕たちは本当に親しくて、彼らは僕にとって大きな存在なんだ。」アッガーは安定した声で語る。
安定、それはこのデンマーク代表選手を表現すべき時のキーワードの一つだ。それは彼のピッチの上での振舞い、そしてピッチの外でも同様である。彼は、過去の出来事や将来の夢にいつまでも捕らわれるようなタイプの人間ではない。ほとんどの彼の仲間のフットボール選手と同じく、彼も現在に生きている。今は右足を包まれてサイドラインに立っていてもである。
「僕は今でも全ての真ん中にいるよ。毎日ここに来て、試合なんかを追いかけている。足を止めて過去の出来事ばかり振り返っているのは辛い。怪我をした時は、前を向いているほうがいいんだ。これからの計画を立てなくてはならないし、それで僕は来シーズンのことを考え始めているよ。今まで3週間松葉杖をついていたから、一つやるのに一日がかりなんだ。手術後の腫れが消えて傷がちゃんとふさがるまで、少し時間がかかるだろう。でももちろん僕はフットボールが恋しいよ。ボールを蹴るだけでもやりたい。」
その間に、リバプールはスロバキア人ディフェンダー、マルティン・シュクルテルを、アッガーに支払ったのとほぼ同額の大金で獲得した。年長のサミ・ヒーピアも1年間の契約延長にサインした。そしてもちろん、ジェイミー・キャラガーもいる。合計4人のディフェンダーが、新シーズンが始まった時に二つのポジションを争う。それはダニエル・アッガーを悩ませはしないだろうか?
「リバプールが別のディフェンダーを買う、それは全く当たり前のことだと思うよ。大きく野心のあるクラブにいればそれは当然なんだ。でも僕は、自分が復帰した時にはプレーできると確信できるだけの、十分な自信を自分自身に持っているよ。僕は臆病なタイプの人間では全くない。」
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もう彼は練習に復帰していますから、術後は順調に回復したようで何よりです。彼の精神的な強さ、プレーへの意気込みが感じられ、読んでいて楽しいインタビューでした。この人はディフェンダー向きのメンタルを持ってるんだなあ、と改めて思います。ファイトを前面に見せるシュクルテルとのコンビがどんな風になるか、来季のことを考えるとわくわくして来ますね。タトゥー満載の、若い長身の強面ディフェンダーが二人ゴール前にそびえ立って、相手のアタッカーを思いっきりビビらせて欲しいですねえ。もちろん経験豊かなキャラガー兄さん、サミおじちゃんもいます。来季のCBは磐石だ!
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