「若手を知ろう」第2弾、今回は3人の選手をご紹介します。
----------------------------------
☆クリスティアン・ネメト ・・・ 1989年1月5日生 20歳
クリスティアン・ネメトは、母国ハンガリーのクラブ、MTKハンガリアでキャリアをスタートさせた。彼はクラブと代表レベルの双方で成長し、2006/07シーズンでは1試合おきにゴールを決めてクラブのハンガリーリーグ2位に貢献し、同時にU-17欧州選手権で活躍した。彼は大会後に、ハンガリーの年間若手最優秀選手に選出された。まだ若い才能溢れる点取り屋で、ラファ・ベニテスはこのストライカー獲得のチャンスを逃さず、彼は2007年7月にアンフィールドへとやって来た。もう1人のハンガリー人選手、アンドレアス・シモンと共にやって来た、将来有望な18歳の選手だった。
怪我と代表召集のために、ネメトは2007年11月までリザーブでのデビューが遅れた。彼はそのデビュー戦、マンチェスター・シティとのリザーブマッチで2ゴールを決めて3-2の勝利に貢献し、続いてエバートンとのミニ・マジーサイドダービーでさらに1点を決め、リバプールファンに印象づけるのに長い時間を要しなかった。彼はリザーブのファーストシーズンで9ゴールを記録し、2008年のアストンヴィラ戦ではリザーブリーグタイトルを決定付ける1ゴールを決めた。ネメトは国際レベルでも印象を残している。彼はハンガリーのU17、U18、U19代表でプレーし、ポルトガル戦では、ハンガリーU19を2008年5月の欧州選手権に進出させるための決定的な1ゴールを決めている。彼がハンガリーのフル代表に召集されるまで、それほど長くはかからなかった。
しかしながらここ最近のシーズンでは、不運が常にこの才能あるハンガリー人ストライカーを襲って来た。2008/09シーズン開始前のプレシーズンの親善試合ラツィオ戦では、前途有望なシニアチームでの出場を果たしたにも関わらず、負傷が彼のファーストチーム昇格の望みを打ち砕き、彼は2008年の終わりまでの数ヶ月間を治療で離脱した。代表チームには呼ばれ続けており、ファーストチームでの経験を積むために、ネメトはチャンピオンシップのブラックプールへローン移籍することを決断した。しかし、彼のローン期間は非常に短かった。彼はデビュー戦で頬骨を骨折し、シーズンの残りをリザーブチームでプレーすることとなった。
しかし、今シーズンのスタートは、ネメトにとってはるかに明るいものになっている。彼のフィットネスは回復し、今年の夏のプレシーズンはスイス・アジア遠征に帯同、この若いハンガリー人ストライカーのハイライトはシンガポールでの5-0の勝利だった。彼はスコアシートに名前を刻んだ。試合後ベニテスは、特に賞賛する選手として彼を選んだ。
「ネメトは非常に優れたフィニッシャーです。彼はリザーブチームで数多くのゴールを決めており、今日はその理由を見せてくれました。」
20歳のこの選手には、間違いなく非常に大きな見込みがある。彼には天性の速さはないが、ディフェンダーを交わしてスペースを見出す彼の才能は、どんなゴールスコアラーにとっても理想的なものだ。あらゆるフィニッシャー同様、彼も正しい時に正しい場所に入るという、鍵となる特性を備えている。一方で、彼は他の選手たちにアシストできるスキルも持っている。彼のプレースタイルの重要な要素は、スペースを作ったりボールを受けるために深い位置まで下がり、他の選手たちに鋭いスルーパスやバックヒールパスを送り、最後はクロスやリバウンドを受けるためにペナルティボックスに入っていくプレーだ。
さらに経験を積むべく、ネメトは今シーズンはギリシャのアテネにローンで出て行き、そこで印象的なデビューを果たした。彼はアトロミス戦で前半のうちに交代出場し、その試合の唯一のゴールとなったブランコの決勝点を導く、すばらしいアシストを決めている。その様子は
こちらで見られる。
このストライカーはアテネで現在までに3ゴールを決めており、その中には同じ都市のライバル、オリンピアコスとのダービーマッチの1ゴールも含まれている。その優れたプレーが続けば、ベニテスが彼をファーストチームのバックアップとしてアンフィールドに戻したがるのは疑いないだろう。しかし、そのプランには問題が生じるかもしれない。ネメトは、アテネに残りたいという彼の願いを公言している。
「オリンピアコスとのダービーマッチで経験したことは、今まで決して感じたことのないものだった。僕たちがリーグ戦でもっと良いパフォーマンスができたらファンはどう感じるだろう、僕は本当にそう思うよ。もしもリバプールとAEKが何か合意に達するなら、僕はアテネに永久に留まることを真剣に考えるだろうと思う。」
さて、この才能溢れる若手がマージーサイドの手のひらからこぼれ落ちてしまうかもしれない、それはリバプールにとって損失か、それともそうはならないだろうか?
☆ダニエル・サンチェス・アジャラ ・・・ 1990年11月7日生 19歳
リバプールの若いスペイン人ディフェンダー、ダニエル・アジャラには大きな期待が寄せられている。この高評価のセンターバックは、セビージャで7年間をすごした後、2007/08シーズン開始直前にアンフィールドへやって来た。現在スペインチームの中で上がって来ているあらゆる若手選手たちを、ベニテスとJose Seguraは最高の選手を選び出そうと鋭い視線で見張っている。そしてアジャラは、彼が18歳に達してプロ契約を交わせるようになる前に、セビージャのクラブの指先から奪い取られた。ダニ・パチェコの同様、リバプールは彼を自分たちのものにするために多額の代償を支払わなければならなかったが、そういうやっかいなお役所仕事をアンフィールドのクラブが潜り抜ける、アジャラの才能には十分にそれだけの価値があったようだ。
マージーサイドでのキャリアを開始するに先立って、彼は既にスペインU-17代表でのプレーを経験し、今はアンフィールドのファーストチームに割って入ることを期待されている。クラブでの1年目、18歳の彼はリザーブとアカデミーを行き来してプレーし、両チームの成功の力となった。ギャリー・アブレットのリザーブチームが2008年のリザーブリーグタイトルを獲得する力となり、リバプールをFAユースカップ決勝に導くことにも重要な役割を演じた。その決勝では、足の負傷に苦しみつつも彼は2つのレグの両方でプレーした。マージーサイダーたちは決勝でアーセナルに敗れたものの、このカップ戦全体でのアジャラの努力は、これから実現を待つすばらしい才能があることを示した。
2008/09シーズンでは、アジャラはリザーブチームでの位置を確かなものとし、ファーストチームに十分な力があるという印象をラファ・ベニテスに与えた。彼は今シーズンのトッテナム・ホットスパーズ戦で、負傷したマルティン・シュクルテルに代わって入り、シニアデビューを果たしている。試合は2-1での敗戦だった。フィットしたセンターバックがチームに不足していたこと、そしてソティリオス・キルギアコスがAEKアテネから加入したばかりで完全に馴染んではいなかったこともあり、ベニテスは、プレミアリーグのストーク戦でアジャラを初先発させることを決断した。
彼は初のシニアデビューに完全にナーバスになっていたが、キャラガー、マスチェラーノ、ジェラードのような経験ある選手たちに囲まれて、試合の中で慣れて行った。彼は試合中常にショートパスや横パスを確実に廻し、ミスを冒さないことを第一とし、ハーフウェイラインを超す冒険はしなかったが、ポッターズを相手の4-0の勝利にしっかりと役割を果たした。試合後、ラファ・ベニテスはアジャラをこう賞賛している。
「アジャラは若く、これは事実上彼の公式戦初試合でした。ほんの少しナーバスになってはいましたが、最終的には彼は非常に良くやりました。彼は努力し、もっと試合をし、経験を積まなくてはなりません。」
リバプールのボスは、ジェイミー・キャラガーのような選手と並んで90分プレーすることは、彼のプレーに必ず役立つと信じていた。そして間違いなくそうなるだろう。身長191cmで空中戦に優れ、足元でのボール扱いもしっかりとしている。現在彼はリバプールの若手仲間であるマーティン・ケリーと、次にファーストチームの最終ラインに割って入る若手スターの位置を競い合っている。今シーズンのリバプールの最終ラインが本来の堅さを欠いている現在、彼らのうちの1人のプレーチャンスは予想よりも早くやって来るかもしれない。アジャラはもちろんファーストチームに割って入るという野心を抱いており、今シーズンのファーストチームのチャンスに興奮している。
「こんなに早くファーストチームでプレーするチャンスが僕に来たというのは、信じられないよ。懸命に努力を続け、トレーニングセッションでいつも全力を出さなくてはならないことはわかっているけど、今シーズンにファーストチームでデビューできたことは、僕をとても誇らしい気持ちにさせてくれた。」
現在アジャラは19歳、彼はとてつもない可能性を持っている。そして彼は最近、11月に2012年6月までの3年の契約延長にサインした。我々はこれからの数年間、もう少しこのスペイン人ディフェンダーを見ることができるかもしれない。
☆ジェラルド・ブルーナ ・・・ 1991年1月21日生 18歳
リバプールがスペインから連れて来た若手選手の1人、ジェラルド・アルフレド・ブルーナ・ブランコは、2007年夏にレアル・マドリーのユースレベルから加入して来た。同国のダニ・パチェコやダニエル・アジャラのように、リバプールは彼が18歳の誕生日を迎えてマドリーがプロ契約を交わせるようになる前に、マドリーの巨人から若手スターを獲得した。ベルナベウで5年間を過ごした後に16歳で彼を奪われ、マドリーはこのスター候補をイングランドのライバルの手に渡したことに決して満足ではなかった。レアルのユースコーチMichelはその時、ブルーナはファーストチーム昇格を失敗した時にリバプールに加わったことを後悔するだろうと発言した。
「どれほど大勢の若手選手が、リバプール、チェルシー、アーセナルに行って実際に彼らのファーストチームでプレーしている?イングランドでは終始そういうことが起きている。彼らは良いと思った選手を奪って行く。その少年と契約を交わし、あらゆる類のことを約束し、それからリザーブチームに入れて、競争的な試合は決して経験させないんだ。」
彼のコメントに怒りが含まれているのは、彼らが前途有望な才能を失ったという事実があるからに他ならない。既に「新しいメッシ」と評されていた才能。ラファ・ベニテスとEduardo Maciaの両名ともブルーナがアンフィールドを選んだことに喜び、同郷のダニ・パチェコと同様に、彼をアカデミーではなく、ギャリー・アブレットのリザーブチームに入れる決断をした。
ブルーナはアルゼンチンで生まれたが、若い年齢でマドリーに見出され、レアルのユースチームの左ウィングとしてプレーしていた。リオネル・メッシとの若年キャリアでの共通点から、スペインのメディアは彼を「マドリーのメッシ」とあだ名した。彼のような若い選手には重すぎるあだ名だったが、それは大勢の人間たちがこの選手の才能に確信を抱いていることの現われであり、彼がリバプールに去った時に多数の人間が怒りを見せた理由だった。しかしメッシと違い、この若いミッドフィールダーは、若い年齢のうちにかなりの時間を過ごしたスペインの代表としてプレーすることを選択した。スペインのパスポートを取得するとすぐに、彼はスペインのU17ワールドカップ優勝と、2008年のU17ヨーロピアン・チャンピオンシップのタイトル保持に貢献した。しかしフル代表レベルでは、まだスペインとアルゼンチンのどちらかを選択可能である。
では、2年半前にイングランドにやって来てから、このスペイン・アルゼンチン人ミッドフィールダーは、どのように力を見せてきたのだろうか?最初のリザーブでのわずかな出場時間の中で、ブルーナは一部の人間が期待したような印象を与えることはできなかった。彼はきゃしゃな体格のために簡単にボールを奪われ、パスは常に正確というわけではなく、相手をドリブル突破しようという試みは、簡単にブロックされて失敗した。しかしファーストシーズンの間に彼は自信を深め、リザーブチームのフットボールに慣れ始めた。そのパスとドリブルは成長し、左足のすばらしいフリーキックを持っていることはすぐに明らかになった。それでも、リオネル・メッシと育成段階が似通っていても、彼が全く異なるタイプの選手であることは明白だった。彼はバランス、スキル、速さに優れ、ゴールを決めるのと同様にチャンスを生み出すこともできる。しかし、彼のロングレンジからの力、セットプレーのキック、フリーキックの威力は、この若手スペイン人選手の最も輝ける能力である。
彼はギャリー・アブレットのリザーブチームが2007/08のリーグタイトルを獲得する力にはなったが、出場は主にベンチからだった。それからのリザーブのダラス・カップ参加のアメリカ遠征で、彼はその才能を見せ始めた。ある試合ではコーナーキックで直接ゴールを決め、その他にも見事なフリーキックで得点をして、彼のセットプレーのキック力を誇示した。しかし、その後の彼の成長はほんの少し停滞気味だ。昨シーズンのリバプールのリザーブチームではレギュラーだったが、この細身の左ウィンガーがひらめきを見せた時は短く、スペインユース代表からの召集も滞っている。最高レベルで戦うために彼に間違いなく必要なもの、それはプレミアリーグに要求されるフィジカルに対応するための強い体だ。そういうフィジカルの強さが、既に持っている生来の速さ、バランス、すばらしい左足に加われば、彼は間違いなく闘える、完成された選手となるだろう。これからの1、2年が、彼がどのレベルで闘える選手になるかの大きな指標となるだろう。
----------------------------------------
ネメトはもう間もなく21歳、そろそろファーストチームデビューを果たしたい時期です。今シーズン中にアテネから連れ戻してくれることを期待しているんですが、ベンチばかりで出番がなくて「アテネが良かった」とシクシク泣かれても困ります。現在は11月の代表戦での負傷がまだ癒えていない様子で、クラブでの出番はありません。
前回ご紹介したラウリ・ダッラ・バッレは、11月にはにメルウッドに戻っていたようです。
ノルウェーのサポーターズサイトによると、12月12日のアカデミーの試合後に彼とちょっと言葉を交わしたそうで、1月復帰をめざして治療中とのこと。8月にひざを負傷し、10月にリハビリのために3週間フィンランドに帰り、12月に復帰を目指していましたが若干遅れ気味だそうです。「ひざは良くなっていて、1月に復帰できることを願っているよ。多分来年の初戦(※1月9日)には間に合うんじゃないかな。」と語っています。元気そうな笑顔です。
SKY SPORTSは、エクレストンが2013年までの3年半の契約延長に応じそうだと報じていましたが、その後の経過は聞こえてきません。記事は契約延長後の1月に彼をチャンピオンシップにローンに出すのではないか、とも言っています。
今年のプレシーズンは、リザーブチームが下部リーグのチームと何回かアウェイでの親善マッチを戦いました。例年になく多い数で、結果は3部や4部のチームとは負けたり引き分けたり。リザーブリーグは、だいたいそのくらいのレベルなんだろうと推察できます。ファーストチームとの差は非常に大きく、リザーブでエース級の活躍をしていてもまだファーストチームには届かない、そういう選手たちが出て来ます。彼らはリザーブにいてももう得るものがあまりないですから、経験を積ませるためにチャンピオンシップのクラブなどにローンに出すことになります。そこで問題なのは、それまで大切に暖めてきたタマゴたちを、全く違う設備、スタッフ、指導者たちの手に渡してしまうことになります。間違って割られてタマゴ焼きにされてしまうという危惧もなきにしもあらず、無事育っても親を勘違いしてしまうのでは、という懸念も。本当は手元にずっと置いて育てたいところなんでしょうが、力の足りない選手をファーストチームに起用するわけにもいかず、非常に難しいところです。
せめてリザーブリーグの試合がもう少し多いといいんですが、年間18試合というのはあまりに少なく、プレーできる選手たちも限られてくるでしょう。12月はリザーブは1試合もなく、仕方なくスペイン合宿を組んで、2部のムルシアとフレンドリーマッチをしたりと工夫しています(結果は0-3の敗戦でした)。インスーアはシーズンがまだ半分にも達していない中で既に23試合をプレー、レイナ、キャラに次ぐプレー時間で、改めて良く頑張っているなあと思います。1月からは彼もようやく「自クラブ育成枠選手」の仲間入りです。
PR
無題
とくに、こういうファーストが体たらくを見せている時に、「俺は怪我をして万全じゃない選手の代わりにもなれないのか」と思ったりする選手も出てこないですかね。若手にチャンスが少ないクラブだと思わせてるから、ローン先で目先の幸せに味を占めてしまうんですよ。
クラブがELをどういうポジションにおいているかわかりませんが、若手を何人も使って欲しいと思ってます。ファーストも下手に遠征させるべきでない選手もいることだし、リザーブよりは刺激的な体験になるでしょう。
個人的には、ちゃんとネメトをンゴグと競わせてあげたいんですよね。まぁ、ファーストでアンフィールド体感させたら、アテネのことなんて眼中から外れますよ。
Re:無題
ELでの起用はtamourinhoさんと全く同感で、ヨーロッパの舞台を若手が経験できるなんてめったにないことですから、ここは生かして欲しいと切望しています。とにかくリザーブだけだとあまりにも、刺激がないですからね。ラ・リーガのリザーブが下部に参戦できるシステムが、時々すごくうらやましくなります。
無題
Re:無題
無題
彼はやっぱり現地でも伸び悩んでるというふうに見られているんですね・・・
「まだフィジカルが出来上がっていない」この年頃の選手によく言われる言葉ですね。フィジカルコンタクトの激しいイングランドでは特に。
オリジナル・メッシも数年前のリーガデビュー時,体が出来上がっていたとは言えませんが,リーガが自分のプレーの質にあったのか飛躍的な成長を遂げました。選手を育てるのにどのリーグが優れていいるというのではないですが,やはり選手によって成長しやすい環境というのもあるのでしょう。
ブルーナ君のファーストチームまでの道のりはまだまだ遠いでしょうが,それでも私は彼を応援し続けますよ!
Re:無題
リーガは10代の子供たちがおじさんと下部でガチ勝負をしていますからね。その辺の経験は非常に大きいと思います。だから、マドリーのユースコーチの発言は的を射ているところもあるでしょう。
ブルーナ君はリザーブに入って3年目でもう長い印象なんですが、まだ18歳なんですよね。彼がどれだけ若い年齢でリザーブ入りしたか、クラブの期待が伺えます。若い年齢の選手にはぐんと伸びる時期があって、その時期は人それぞれなので、彼もこれからブレークするかもしれません!怪我が治って年明けからの試合が、彼にとって勝負の時となるかもしれませんね。