今季今まで7試合して10失点、うち9点はセットプレーから。当然のごとくセットプレーの守り、それもゾーンディフェンスについての批判が続いています。ハル戦は流れの中からでセットプレーではありませんでしたが、これからインターナショナルブレークまでアウェイの厳しい2試合が待っています。守備の問題は未解決のまま、チェルシーの強力な高さを考えると不安はつきません。そこで疑問に思うのは、
1.セットプレーでの失点がどうしてこれほど多いのか?
2.キャラは限界なのか?
の2点です。これに関して、ハル戦の前に興味深い記事が3つほど出ていました。それをご紹介します。まずは
BBCラジオにローレンソンが語った記事から。
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「変更が必要だ」ローレンソン元リバプールディフェンダーで現BBC解説者であるマーク・ローレンソンは、レッズは選手とプレミアリーグフットボールに合ったシステムに変更すべきだと語る。
リバプールは彼らのセットプレーの守りにゾーンマークを採用していることをしばしば批判されて来たが、ローレンソンは、ラファ・ベニテスは今こそ混合したやり方での守備を使う時であると考える。
リバプールで332試合に出場したこの元アイルランド代表選手は、彼がアンフィールドのピッチで活躍した時のレッズの守り方は、この混合したシステムとそれほど変わらないと説く。
「ゾーンとマンマークを混成して、一定の位置に一定の選手を配置することが必要だ。」ローレンソンはBBCラジオ・マージーサイドで語った。
「私がプレーしていた頃を思い出すと、ロニー・ウィーランがゴールエリアの真ん中をマークし、誰か特定の選手にはついていなかった・・・それが彼の仕事だった。そして2人の人間がポストに付き、我々の残りはマンマークについた。
基本的には様々な意味で、それが絶対確実なんだ。マンマークについたら、マークの相手がボールに触るのを阻止するか、それを邪魔する。その仕事をしっかりとやれば、相手チームが得点するのは非常に困難になる。
ところが最近は、ゾーンを使っているために、誰かがマーカーから半ヤードも離れていて、そのためにボールはボックス内に運ばれ、そこではいさようならだ。またしてもゴールが決まる。混合したシステムを使う時だと私は思う。シュクルテル、アッガー、キャラガーなら、ヘディングの上手い選手たちをマークしてボールに触らせないことをしっかりとやれるはずだ。だから納得が行かないね。マンマークとゾーンをミックスすればいいことで、私はそれができると思う。」
今シーズンはトッテナムとアストン・ヴィラに既にリーグ2敗を喫してはいるが、ローレンソンは彼の元クラブはまだプレミアリーグタイトルに挑戦可能だと信じている。
「トップ4のチームはアーセナル、リバプール、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドとなるだろうが・・・2、3試合以上落とす可能性はあると思う。チェルシーを除いて、その兆候は見えていると思うよ。シャビ・アロンソを欠いたことで我々は少し後退し、スタートでちょっとつまずいたようだ。しかしその後の結果は非常に良くなっている。」
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ローレンソンのファンの方には非常に申し訳ないですが、この記事が出た時は「何言ってやんでい」と思っていました。するとBBCの記事の後を追うように、
タイムズ紙からバレット記者の記事が出て来ました。
リバプールはセットプレーでひどく不十分ヨーロッパのトップクラブでプレーするあるスペイン人ゴールキーパーは、最近彼のチームのセットプレーの守備に非常に落胆し、こうプレスにコメントした。「僕たちが許したゴールを見てみれば、止まったボールの状況でひどいというのは事実だ。」
レアル・マドリーはラ・リーガの開幕序盤でそういうゴールを4つ許しており、イケル・カシージャスがそこまで落胆しているのは良く理解できる。彼と同国人であり、ゴールキーパー仲間でもあるリバプールのペペ・レイナがこのコメントをすることも、誰もが予想できるだろう。今シーズン既にセットプレーから9度失点しているのを考えれば、彼のコメントもそう違いはないはずだ。
ボールが静止した状況でのリバプールの脆さについて一番簡単な説明は、彼らの監督、ラファ・ベニテスが使っているゾーンマークシステムのせいにして非難することだ。しかしそれは極端な単純化である。バルセロナもまたペップ・グラウディオラの元でマンマークよりもゾーンを採用し、それは昨シーズン、彼らのチャンピオンズリーグ優勝を妨げはしなかった。
また、リバプールの元ディフェンダーであるアラン・ハンセンは、このクラブがヨーロッパで卓越していた時代にも同じようなシステムを使っており、それは決して害をもたらしはしなかったという証拠を掲げている。
しかしながら、ゾーンマークでの守備は明らかに最近のリバプールの問題となっている。彼らが今シーズン失点した全てのゴールがセットプレーからであるということについて、誰か他に説明ができるだろうか?
もちろん、二つのペナルティは誰にも起こり得ることであり、シーズン開幕戦のベノワ・アス=エコットのゴールはフリーキックからだったが、リバプールの壁を跳ね返ったボールを彼が決めたもので、少し違う問題である。しかし他の6失点は・・・ボルトン・ワンダラーズ戦とアストンヴィラ戦での2点、そしてウェストハム・ユナイテッドとスパーズ戦での1点・・・これらはセットプレーで空中での対処の失敗の結果だった。
最新のOptaの統計を見てみると、リバプールは良いのか、それとも言われている通りに悪いのか・・・今シーズンのプレミアリーグでのゴールの42%はセットプレーからである。しかし、リバプールの記録は間違いなく彼らの監督を非常に憂慮させているだろう。ベニテスは他のチームの失敗から慰めを得るタイプの監督ではないし、昨シーズンの彼のチームは同じセットプレーで30%しか失点していないのだからなおさらだ。
ゾーンマークは、マーマイト(※英国のペースト調味料で独特の味と香りがあり、日本の納豆のようなもの)のカテゴリーに属するもので、好きな人は大好き、嫌いな人は大嫌いである。過去4シーズン中の3シーズン、レイナがプレミアリーグで最もクリーンシートを獲得したキーパーとなり、ベニテスの元でのリバプールのディフェンス記録が、リーグの他のどこのチームと比較しても際立っているということを忘れてはならない。
「私がリバプールでチャンピオンシップ優勝を果たした時、我々はいつもゾーンマークを使っていた。」ハンセンは以前こう語った。「ファーストボールに競り勝つことが何より肝心で、もしそれができなければ、セカンドボールをクリアしなくてはならない。」
完璧ではないとしても、このシステムはこのクラブが歴史上最も成功を収めた時期には十分に機能していた。しかしながら、今のリバプールはゾーンマークを機能させるのに十分なだけファーストボールに競り勝っていない。相手のセットプレーからもたらされる空中戦での脅威と戦う方法を彼らが見出さない限り、2度目のタイトルチャレンジを達成させる希望はしぼんでしまうだろう。
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次は、同じ
タイムズ紙よりキャラに関する記事です。
「ジェイミー・キャラガーは年齢と共に良くなっていく」ラファエル・ベニテスジェイミー・キャラガー、リバプールディフェンダー、彼は以前、ラファエル・ベニテスからの賞賛は意味深いと語ったことがある。このスペイン人は、自分の選手を誉めそやすタイプではないからだ。
キャラガーが10年間以上に渡って貢献して来たこのチームにおいての、彼の価値に疑問が起こっていた1週間が過ぎて、彼の監督がこの31歳の選手は今まで以上に良いと主張することでそういう雑音を否定したことを、彼はきっと喜んでいるだろう。
先週末のウェストハム・ユナイテッドとのアウェイの試合でリバプールは3-2で勝利したが、そこでのキャラガーはウィンガーのザボン・ハインズの速さに翻弄されてペナルティを与え、一部の人間の大きな批判の的となった。
しかしベニテスは、この元イングランド代表選手のピークの時は既に過ぎたという理論には賛同せず、その代わりにこのクラブに最も長く在籍している選手が年齢と共に成長を続けていると主張している。
「26歳の時より、31歳の時の方がディフェンダーは優れているものです。」ベニテスは語る。「5年の経験を積むことで相手選手のことをさらに良く知り、動きとポジショニングは良くなります。フィジカル的にフィットしていれば、キャラがそうですが、さらに優れたディフェンダーになれます。バレンシアではリバプールと対戦したことがありますから、私はキャラのことをこのクラブに来る前から知っていました。彼は今は試合を読む力がはるかに増し、ずっと良い選手になっていると思います。
彼は相手選手を分析することが出来ます。自分のベストポジションをわかっています。他の誰もと同じようにミスもありますが、彼は声を出して他の選手たちに指示をする選手でもあり、それは重要なことです。私は彼がミスをしたとしても気にはしません。
持っている速さを増すことはできません。遅い選手は遅いんです。キャラはゲームインテリジェンスを増すことで素早くなっています。私は彼と、フィジカルコンディションについて話し合っています。皆が疑問を挟んでいますからね。彼のフィットネステストの結果はシーズン開始時よりも良くなっており、問題はありません。彼はミスをしましたが、ディフェンスを向上させなくてはならないのはチーム全体です。私は彼のことを心配してはいません。」
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ゾーンディフェンスに関してはやみくもな批判は論外ですが、やみくもに肯定するのもまた同じだよなあと考えて、「そもそもなぜゾーン?」ということを少し考えてみました。
ゾーンもマンマークもそれぞれメリットとデメリットがあります。ゾーンの批判で良く言われるのは、「ゴールを決めるのはゾーンじゃなく人なんだから、人を捕まえておけ」ということです。ゾーンディフェンスは人ではなくゾーンを守るので、状況によってはミスマッチや、時にはフリーの選手を作ってしまうことがあります。
しかし一方で、マンマークでは相手選手に釣られたりブロックされたりしてバランスを崩し、危険なエリアを空けさせられてしまうことがあります。そして人に引きずられてしまうために、どうしてもボールに対して後手に回りがちです。ゴールとは最終的にボールが入って決まるんですから、ボールが蹴り込まれる瞬間に人ではなくボールに集中するというのは、空中戦で競り合う際の大きなメリットになるでしょう。「一番危険な人」ではなく「一番危険なエリア」に最も空中戦に強い人間を配置し、ボールに集中することでそこでさらに優位に立とうというわけです。
レッズの場合はその危険な場所についているのは、ゴール前にキャラとシュクルテル、ニアポストにはトーレスですね。で、今季のセットプレーでやられたシーンを見てみると、どうも彼らがゴール前で空中戦に勝てていない。ゾーンの外から走り込んで来た選手を誰が見るかはっきりせずにフリーにしてしまい失点、というなら(昨シーズンはそういう失点が何度かありました)これはゾーンをなんとかせねばという話になりますが、一番強いはずの選手たちが危険なゾーンを守って防ぎきれないのを、マンツーマンにしても無理だろうというのが個人的な感想です。特にシュクルテルが空中戦でどうも弱いというか、時には腰が引けているようにさえ見えて非常に気になっています。あの接触での負傷が影響しているんではないと思いますが・・・。アッガーも決して空中戦は強い方ではないから、彼が入って改善されるかというとそれも疑問です。
今まではコーナーというと「位置につけーーい、そして跳ね返せーーーい!」という気分で見ていたんですが、相手選手の配置や誰がしっかり競り勝っているか、誰がどう動いているかを注目するとまた面白くて、最近は怖さと共に楽しみも増えました。しかしとにかく一瞬の出来事で、俯瞰して見ていても何がなにやら掴めないのに、実際ボックスの中に入っている選手には本当に瞬時の高い判断能力が要求されるんでしょう。
キャラはハル戦でもミスをしてしまいました。しかしいいタックルで危険を防いだプレーも何度かあったし、前節もそうでしたが、ミスで決して心が折れず奮起したようにいいプレーをしてくれるのは彼の頼もしいところです。スピード不足や判断ミスはありますがそれは今に始まったことじゃないし(キャラごめん)、ラファの言うように年齢的にまだ衰えが出る時ではないですから、これからパフォーマンスが上がって行くことをひたすら願うばかりです。彼が果たして年齢の限界なのかそうでないのか、それはこれからわかるでしょう。
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無題
ちなみに僕もフニクラさんにすっかり同意見で、ゾーンだマンマークだ、ミックスだの前にあたりに行った選手が勝てないのは確かにと思ってました。フリーで決められたシーンもありますが、そりゃ事故みたいなもんですし。というかそのボールウォッチャーぶりも含め、メンタル的な問題ですよね。何か「またミスったら…」とか考えてそう。キャラは衰えとかでは絶対ないと思うし、シュクルテルもあの体つきで今のパフォはベストではないのは明らかですし、現実キルギアコスは割とどこ吹く風みたいな感じで本来のポテンシャルを見せてると思いますし。な~んか今は「かかってこいや~」って感じじゃないですよね。
キャラとシュクなんか顔からそうなんだから(爆)ぶっとばしたる!くらいの気持ちでやってくれたら完全復活すると思うけどなぁ。もしかしてラファも裏で「恥ずかしくないのか!」って怒っているんでしょうか…
でもアッガーの復帰には期待してます。やっぱセンスはずば抜けているんで空中戦はともかく「俺がいないと駄目だな」みたいな感じで戻ってきたらキャラやシュクも「何くそ~」ってなりそうですし!!(顔つきから予想)
Re:無題
>な~んか今は「かかってこいや~」って感じじゃないですよね。
それ思います!見ている方もアワワワなんですが、やってる方もアワワワなんじゃないかという疑惑が。セットプレーは守りもそうですが攻撃にも可能性をあまり感じません。それは単純に空中戦が弱いということなのか・・・。選手たちにはこういう疑惑を吹き飛ばして欲しいんですけどね!
アッガーは今日のリザーブ戦で復帰しそうですね。彼には最終ラインからのビルドアップという大きな武器がありますから、その点でものすご~く期待しています。インターナショナルブレークには間に合いそうですから、母国の正念場に出場できるのを喜んでいるでしょう。普段なら国際戦は負傷が心配なんですが、今回の彼にとっては、実戦でフィットネスを上げられるのでクラブにとっても良いことだと思います。