Guillem Balagueのサイトに、アロンソとかつてのリバプールの14番、ヤン・モルビーとの対談が掲載されています。これは、「対談するなら誰がいい?」とアロンソが聞かれて「ヤン・モルビー。僕がアンフィールドに来てからずっと比較されていた選手だから。僕たちは違っていると思うけど・・・」と答えて実現したものだそうです。
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Xabi Alonso:何年も前にTVでイングランドフットボールを見ていた時のことはあまり思い出せないんですが、僕はここに来てからあなたのことはたくさん聞いて来ました。あなたは、正確なパスを供給し正しい判断を下すことのできる、すばらしい能力を持ったオールラウンドなミッドフィールダーだったんですよね。ミッドフィールドであなたは自分自身が良いプレーをし、さらに自分の周りにいる選手たちのために解決策を見つけなくてはならなかった。そして僕よりもずっとゴールを決める能力に長けていた、それは確かですね!
Jan Molby:フットボールで最も難しいのはゴールを決めること、そして2番目に難しいのが試合をコントロールすることだよ。そして試合をコントロールできる選手をフットボールの中で見られたら・・・そう、それは美しい。君にはそれができる。君のような種類のミッドフィールドの選手を我々が得るまで、しばらくの間があった。フットボールとは正しい判断をすることが要で、それが多ければ多いほどチームプレーが優れたものになる。それには単なる能力だけではなく、この競技を知っていること、試合の中でそれだけ関与するための知性が必要だ・・・
Alonso:そして時には、最も華々しいプレーを試みるのではなく、一番簡単なことを選択する必要があります。それがチームにとって最も利益になることですからね。
Molby:我々のような選手、ホドルのような選手を、人々はいつも試合の中で10~15回は60ヤードのパスを出すのが当たり前だと思っている。しかしそうではないんだ。ほとんどのパスはプレーを動かすためのものなんだ。今私が人と話をすると、彼らは私が60ヤードのパスばかり出していたと思っているよ!私がプレーを始めた頃は、ミッドフィールダーはオールラウンダーだった。
今は我々は、守備的ミッドフィールダーやプレイメークをするミッドフィールダーというような特定の役割を表現する。1990年代には、新しい練習法と戦術上の意識がイングランドの競技に導入され、4バックの前に位置するホールディングミッドフィールダーが取り入れられた。私はそれよりはるかに前線でプレーを始めたよ・・・ちょうどケニーとイアン・ラッシュの後ろでだ。1990年代の私を見た人々は、それが信じられないだろうね。
Alonso:僕の父もそんな感じでした。彼は1980年代にはあなたのポジションで、4-4-2のシステムの中でオールラウンドなミッドフィールダーとしてプレーしていました。毎シーズン彼は10ゴールぐらい決めていましたね。今は、4-1-4-1,、4-3-3、4-2-3-1を採用するチームが多いですね・・・それは、ペナルティボックスの中に入り込んでいくよりも、よりポジションをキープすることを意味します。僕はボックスの中に入っていくことはほとんどありません。自分の役割を理解し、それを受け入れなくてはなりません。それがチームのためにベストのことですからね。僕は自分の今の場所を本当に楽しんでいますよ。僕は試合の全ての部分に関わりたいと思っているし、このポジションはまさに真ん中です。攻撃に近く、ウィング、ディフェンスに近い位置です。他の誰よりもボールに触れます。マイケル・キャリックがイングランド代表でそれができます。しかしフットボールの文化は、ここイングランドでは全く異なりますね・・・。
Molby:イングランドの人々は、選手が若い時から、運動量が豊富でフィジカル的に強く、全てに関わることのできる選手が若手ミッドフィールダーだと見なすね。13歳か14歳の時には、私や君のような選手はイングランドの人々の目には止まらないだろう。ここの人々は、我々のような種類のミッドフィールダーが試合にもたらすものを評価しないんだ。私たちのようなイングランドの選手があまりいないのは、それが理由だよ。それにこうも思うんだが、君や私のようなプレーのやり方は、優れたチームの中でしかできない。優れた選手があまり大勢いないチームの中では、プレーするのが非常に難しいだろう・・・選手にパスをしても、彼らがボールを欲しがらないという状況になってしまうからね。彼らがプレーできる時、君もプレーできる。
Alonso:シンプルにプレーすること、正しい判断を下すこと、試合を読むこと、自分の周囲に何かを起こす適切な瞬間を知っていること、そういう能力はイングランドでは評価されません。タックルをしたりボックスの中に走り込む、そういう派手なプレーの方が評価されますね。
Molby:タックルをするべき時というのはある。しかし適切なポジションを取っていれば、強烈なタックルをする必要はないんだ。この間のアンフィールドで、ジェラードはタッチライン際でそういうタックルをしたね。そしておそらく君はあれは必要ないと思っただろうが、彼にとっては必要だったんだろうね?
Alonso:彼にとってだけではないですよ。時には、ああいった土壇場のタックルが観客の興奮を盛り上げ、そこから勢いを得られるんです。それは試合の心理的な意味で重要ですが、選手の能力次第ですね。スティービーやキャラ、マスチェラーノもああいうタックルにかけてはすばらしいですよ。僕とは違います。
アンフィールドで背中に感じるもの、あの歓声、それはものすごい感覚です。大一番の夜は特にですね。自ずと熱いエネルギーで一杯になって、はるかに良い精神状態になれます。アンフィールドがもたらすものは、世界中の他のどのスタジアムもかないません。
Molby:私はそれが恋しいよ。1970年代から80年代初めには、リバプールはたくさんの大一番の夜を経験した。そして突然、我々はヨーロッパでプレーできなくなった。その後復帰した時には、我々はヨーロッパの大舞台に自分たちを進めさせることが決してできなくなっていた。だから、それが戻ったのはファンにとって特別だったよ。彼らは「これこそ僕たちが失っていたものだ」と思ったはずだ。
Alonso:そういう全てを後ろに残して、このクラブを去るのは困難だったに違いないですね・・・。
Molby:その通りだよ。最終的に私は1996年に移籍したが、その前から移籍の接触はあったんだ。最も注目を浴びたのは1990年のバルセロナだった。実現はしなかったが、私はリバプールに残ったのだから、それは大きなことではなかったよ。
Alonso:昨年の夏、僕はあなたが僕についてとてもポジティブに語っている記事を読みました。そのことに感謝を言いたいと思います。僕がああいう不確かな時期を過ごしていた時、大勢のファンが僕を支え、こう言ってくれました。「僕たちは君にここに残ってもらいたい。しかし最終的にそうならなかったとしても、僕たちは君の成功を祈り、君がここにいてくれたことを幸せに思う。」僕はそれにとても感謝しています。今僕はここにいて、ここにいることがとても幸せです。リバプールのようなクラブは他にはありません。
Molby:特別な選手がいたら、可能な限りその選手を長く留めておくべきだと思うよ。特別な選手にめぐり合うというのはそう多くはない。
君も14番のシャツを着ている。なぜ君はその番号を選んだんだい?私の場合は、チームの番号を決める時にクラブが私に好きな番号はどれかと聞いたんだよ。それは10番か14番だった。私は1年間ヨハン・クライフと共にプレーしていたから、14番を選んだんだ。彼が有名にした番号だ。
Alonso:僕はレアル・ソシエダにいた時には4番を着けていて、それは父がプレーしていた時の番号でした。リバプールに移籍した時はサミ・ヒーピアが4番を着けていて、僕にそれを選ぶチャンスはなかったんです。選べたのは10、14、18でした。僕はすぐに14番を選びましたよ。それはずっと好きな番号でしたからね。もし今4番を選べるチャンスがあったとしても、僕はそうはしません。実際スペイン代表でも14番を着けていて、もう変えられませんよ。
Molby:14番はヨハンのおかげで、フットボールにおいて意味深い番号だね。リバプールでは7番が重要な番号だ・・・
Alonso:10番・・・それはビッグプレーヤーがつける番号ですね。ジダン、ペレ、マラドーナ。しかし14番は、それを有名にしたのはまさにヨハン・クライフです。他の誰でもありません。だからこそ特別なんです。
Molby:君は偉大な選手たちについて語っているが、リバプールはシャンクリーの時代から、常に監督のクラブだったね。
Alonso:僕はそういう状況をやりやすいと感じています。僕にとってはとても良く機能しているんです。ピッチの上では僕は責任を負い、ピッチの外ではそれはありません。決断がされるのピッチの上で・・・それは結果に直結します・・・それをやるのは僕たちです。ピッチから離れたところで起こっていることに、あまり煩わされることはありません。
Molby:私が初めて海を渡って来た時は奇妙に感じたよ。ヨーロッパの大陸では、コーチはそういう指導者ではなかったからね。ヨーロッパでは、コーチは出て行って記者会見に臨む人間である必要はなかった。それから私はイングランドにやって来て、そこでは全てにおいて一人の人間が責任を負っていた。それはすばらしかったね。インタビューやプレスの受け答えをする回数がずいぶん減ったよ。私を獲得したのはジョー・フェイガンだったが、すばらしい監督だった。それからケニーになり、一度彼が就任したら、誰もが話したがる人間はただ一人、ケニー・ダルグリッシュになったよ。それは選手の立場からするとすばらしいことだったね。我々はプレーにのみ集中し、何か批判があればそれは監督にで、選手にでは決してなかったよ。
しかし選手は、監督と同じように、ここ数年に渡って変化している。ほとんどの人々がそう考えている。私にはわからないが・・・
Alonso:ええ、その能力に関して言えば、ほどんと同じです。当時能力のあった選手たちは、今やっても能力があるでしょう。最近の試合のテンポに適応する、それが一番の違いですね。そしてこれから20年後には、またさらに速くなっているでしょう。それに加えて、チームが自分の選手たちを分析し研究することも、以前よりもはるかに詳細に渡っています。1970年代にはチームには12人か13人の選手しかいませんでした・・・それは全く変わりましたね。しかし、僕はいつも言っているんですが、過去に優れていた選手たちは、今やっても優れた選手でしょう。
Molby:今見れば、我々はそれほど速くないとおそらく思うだろう。それは大きな違いだね?私はそれは、ピッチの上の選手たちがより特別な役割を担うようになったことと関係していると思う。私の時代は、一人のリバプールの選手が60ヤード戻り、それから90ヤード前に走るというのはめずらしいことではなかった・・・今は影響を及ぼすべきピッチの場所はより狭くなっている。我々はへとへとになってシーズンを終え、休暇を心待ちにしていたよ。
近頃では、夏の間に選手たちは体調を崩すね?我々は休暇に入るときに体調を崩していたんだ!クラブは我々によくこう言っていたよ、「7週間楽しい夏の休暇を過ごして来い、戻って来た時には君たちは元気になっているだろう。」とね。
Alonso:僕たちは完全に体調を崩すということはありません。だいたい4週間の休暇で、その間にテニスや何かをいつもやっています。自分が何かを完全に忘れたりはできませんよ。
Molby:なぜだい?君は他の人間とは全然違うのかな?
Alonso:そういういい感覚、汗をかかないと落ち着かないんですよ。だからテニスをしたりちょっとランニングしたり、そいうことを欠かさないんです。だからっていつもトレーニングのことを考えているわけじゃないんですが、さっき言ったように、自分が何者かを忘れることができないんだと思います。「プレシーズンに入ったらトレーニング漬けになるんだから、体調を崩しても構わないだろう」とは思えないんです。でも、ひと夏が終わって戻った時は体重100kgになっているのは事実ですね・・・
Molby:そうそう、100kgね!そしてプレシーズンの5週間で私は戻したよ。
Alonso:あなたは7週間のオフを取っていたと言いましたか?
Molby:最長は9週間だった・・・
Alonso:9週間のオフなんて想像もできません。僕たちのオフは普通3週間半です。去年の夏はEuro2008があって、今年の夏はコンフェデレーションカップを戦います。試合が多いですよ・・・
Molby:成功の代償だね・・・
Alonso:ええそうです、代償を払えて幸せですよ。
Molby:体が疲労しているなら、それは回復できる。しかし頭脳が疲れていたら、回復するのは非常に難しいだろう?ハードな試合を戦っても時には2日間で回復できるが、頭脳が疲れていたら、回復までに数週間を要することがある。
Alonso:クリスマスシーズンは特に試合がとても多いですね。でも新鮮な気持ちを持っていれば、すばらしい感覚でプレーできます。
Molby:今はシーズンの鍵となっているね。
Alonso:ええ、そして責任を感じさせますよ。人々は僕たちにプレミアリーグ優勝のチャンスがあることを、本当に気にかけています。そして、それが僕にさらにモチベーションを与えてくれています。
Molby:優勝できたらそれはすばらしいだろうし、クラブの歴史上最大の日になるだろうという感じを私は持っているよ。クラブが今まで成し遂げてきたもの、そのトロフィーを考えればおかしく聞こえることはわかっているが、もしも優勝できたら・・・ものすごいことになるだろう。
Alonso:スペイン代表が大きな大会で優勝したのと似ているでしょうね。全員の肩から重荷を、重責を取り去るでしょう。
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アロンソのプレースタイルは、英国ではあまり評価されないんでしょうか?今シーズンは十分賞賛を受けていると思いますが・・・。マスチェラーノは厳しいタックルを決めてチームの危機を度々救いますが、チームのバランスを取って攻撃を動かしているのはアロンソです。今シーズンの彼は特に本当にすばらしい!夏にファンの支えを受けたことに彼はこれまで何度も感謝を口にしていますが、それを十二分にファンに返してくれていると思います。
この対談は、チャンピオンズ誌の次号に掲載されるそうです。日本語版でも読めるでしょうか?
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無題
本国イギリスで記事として出てから早々に、しかも上手に訳されていて、Xabi好きのLiverpoolファンとして、いつも楽しみに読ませていただいています。
今回はXabiの長いインタビュー記事だったこともあり、初めてコメントさせていただきました。
いよいよシーズン大詰め。毎試合のドキドキ度もupしそうですが、プレミアリーグ&CLの勝利を願って応援し続けます。
Re:無題
上手に訳せているかどうか、そう言っていただけると嬉しいです、頑張ります^^。
この記事はとても面白かったです。アロンソらしいインタビューで、彼の自分のプレーに対する自信や自負、そしてクラブの他のCMFたちへの尊敬の気持ちも伝わってきました。彼は本当にいい選手でいい人ですね。
代表で2試合フルに活躍して疲れているとは思いますが、これからの正念場、クラブでもすばらしい60ヤードのパスを、そして試合をコントロールする美しいプレーを見せて欲しいですね!